Quantcast
Channel: ~絵を見る技術~
Viewing all articles
Browse latest Browse all 125

『良い構図が分かる!』の補足 その2

$
0
0

今回のセミナーでは、”良い絵には必ず優れた幾何学的な構造がある”

と大上段に振りかざしました。

 

大体、納得していただけたようです。たぶん。

 

そして出てきた質問。

 

「一体、そういう幾何学的なバランスは、歴史上いつ頃から使われ始めたのか?」

 

ルネサンス時代なのか、もっと古いのか、古代ローマとかなのか、という事ですよね。

この質問を聞いて、私の頭に電撃のように浮かびあ挙がったのが以下の図でした。

(でも、その時は言いませんでした、画像を手元に持ってなかったので・・・)

 

紀元前6000年~紀元前5500年頃のものとされる

ヨルダン、アインガザール出土の新石器・先土器時代の石の像です。

 

”とっても幾何学的、”という指摘を、私の師匠がしたのが↓の論文。

出典)Schmandt-Besserat, Denise. "A Stone Metaphor of Creation."

Near Eastern Archaeology 61:2(1998).

 

彼女(石像)は、いい感じにお尻を上に向けてうつ伏せで埋まっていたところを

考古学者に掘り出されました。

 

確かにこの像は幾何学的な造形。

 

ただし、気を付けたいのは、同時代の粘土だとか石膏の像は

かなり素朴で、フリーハンド感が強いものだということ。

 

ここから分かるのは、先史時代から、幾何学的なこと(左右対称とか、正中線とか)を意識したモノづくりの萌芽が見えるという点でしょう。

 

また、ここまで古くなくても、エジプトの壁画なんかも、どう考えても測って描いているのが分かりますね。全部、同じような形、ポーズ、比率。プロポーションが決まってるんです。

 

古い時代の作品の一つの傾向として言えるのは、粘土など柔らかい素材製(左)より、石製(右)のものの方が、幾何学的なデザインになっているケースが多いということです。

 

 

原材料や技術面から来る制約によって、形が決定するという例でしょうか。

構図の話からは少しそれてしまったのですが

形というのは、何かしら根拠があってそういう形になっているものです。

 

そこを探る面白さの起点として、構図(比率、全体のバランスの中での位置決め)を知っていると便利だね、ということなんですね。

 

 

今回のセミナーでご紹介できたのは、構図の秘密のごく一部。

他にもまだまだ構図・比率にまつわる面白い話があるんですが

また構図のセミナーを頼まれたらやります(笑)

出し惜しみ、出し惜しみ。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 125

Trending Articles