今回のセミナーでは、”良い絵には必ず優れた幾何学的な構造がある”
と大上段に振りかざしました。
大体、納得していただけたようです。たぶん。
そして出てきた質問。
「一体、そういう幾何学的なバランスは、歴史上いつ頃から使われ始めたのか?」
ルネサンス時代なのか、もっと古いのか、古代ローマとかなのか、という事ですよね。
この質問を聞いて、私の頭に電撃のように浮かびあ挙がったのが以下の図でした。
(でも、その時は言いませんでした、画像を手元に持ってなかったので・・・)
紀元前6000年~紀元前5500年頃のものとされる
ヨルダン、アインガザール出土の新石器・先土器時代の石の像です。
”とっても幾何学的、”という指摘を、私の師匠がしたのが↓の論文。
出典)Schmandt-Besserat, Denise. "A Stone Metaphor of Creation."
Near Eastern Archaeology 61:2(1998).
彼女(石像)は、いい感じにお尻を上に向けてうつ伏せで埋まっていたところを
考古学者に掘り出されました。
確かにこの像は幾何学的な造形。
ただし、気を付けたいのは、同時代の粘土だとか石膏の像は
かなり素朴で、フリーハンド感が強いものだということ。
ここから分かるのは、先史時代から、幾何学的なこと(左右対称とか、正中線とか)を意識したモノづくりの萌芽が見えるという点でしょう。
また、ここまで古くなくても、エジプトの壁画なんかも、どう考えても測って描いているのが分かりますね。全部、同じような形、ポーズ、比率。プロポーションが決まってるんです。
古い時代の作品の一つの傾向として言えるのは、粘土など柔らかい素材製(左)より、石製(右)のものの方が、幾何学的なデザインになっているケースが多いということです。
原材料や技術面から来る制約によって、形が決定するという例でしょうか。
構図の話からは少しそれてしまったのですが
形というのは、何かしら根拠があってそういう形になっているものです。
そこを探る面白さの起点として、構図(比率、全体のバランスの中での位置決め)を知っていると便利だね、ということなんですね。
今回のセミナーでご紹介できたのは、構図の秘密のごく一部。
他にもまだまだ構図・比率にまつわる面白い話があるんですが
また構図のセミナーを頼まれたらやります(笑)
出し惜しみ、出し惜しみ。