「絵を見る技術:良い構図が分かる編」の補足です。
(セミナーに参加してない方には、分かりにくい箇所があるのはご了承ください。)
『風神雷神図』に関して、鋭い質問が二つ出ました。
1.「雷神の背中の輪っかは、幾何学的にどういう位置づけが出来ますか?」
2.「宗達の『風神雷神』と、それを模写した光琳のものとで、構図に何か違いがありますか?」
講師感激。
私なりに、考えてみたことを、以下に示します。
1.雷神様の背中の輪っかの位置づけ
↓このように見てみると、お二方とも円ではなく、楕円に納まっていると分かります。
厳密には、輪っかはフリーハンドならではの味があり、必ずしもCGのような
楕円にはなりません。特に、雷神さんの向かって左側は、少し内側に入り込んでいます。
ですが、それを差っ引いても、明らかに楕円に収まっていますね。
ちなみに、宗達は扇デザイナーでした。
そうすると、画面中央下部ががら空きなのも(扇だとカナメの部分だから絵がない)
習性かもしれません。
また、扇の弧は楕円からなっていますよね。
風神雷神さんの納まっている楕円もこれと関係あるかもしれません。
その楕円の位置づけですが・・・
ちょうど左上の画面頂点から、画面の左から八分の三の位置に降りる線の上に
楕円の中心が乗っているように思えます。
さらに、楕円の底が画面の縦を四分割したとき、下からちょうど四分の一の位置です。
これが私の限界です(笑)
もっと良い考えがあったら教えてください、是非。
2.宗達と光琳の違い
宗達が上、下が光琳のものです。
ぱっと見て分かるのは、光琳の方がくちゃっとしている。
影が画面を占める面積も広い。
そして、お二方の縦位置が、宗達は上よりなのに対して、光琳は多少真ん中に寄っている。
宗達の風神雷神が縦長の楕円に収まっているのに対して
光琳の風神雷神は、円に収まっているのが分かります。
頭から足先まで、円の中に。
また、若干ですが、風神さんが上にいます。
お二方の頭がちょうど横一列に並ぶよう配置されています。
なるほど、これが違いだったのかぁ、と思いました。
一般的に、縦横の比率で縦長な方が、カッコいい系で
丸っこいのは可愛い系ということになっています。
光琳の方が、かわいい系ということになるんでしょうか。
光琳は呉服屋の息子。ということは、宗達=扇、光琳=着物
の伝統の影響を受けている可能性が考えられるでしょう。
人は、見慣れているものから多くを読み取るものですから。
これ以上は、構図だけを見ていても分からないことで
もっと図像学(イコノグラフィー)的、図像解釈学(イコノロジー)的な視点が
必要になってきます。前者は、時代特有のモチーフの意味だとか、後者はより広い社会的な背景を絡めて意味・意義を捉えようとする手法です。
そういったことは”構図だけ” を見ても分からないことと言えるでしょう。
今回は、見て分かる構図について考えるという方針だったので
ここまでにしたいと思います。