Quantcast
Channel: ~絵を見る技術~
Viewing all articles
Browse latest Browse all 125

似合うスーツ

$
0
0

久しぶりですが、研究は続いています。


いきなりですが、自分にどんなスーツが似合うか、御存じですか?


これを知っている事も、見る技術です。
つまり、どういう状態なら「似合っているか」見て分かるという事になります。

お前が知ってるのかよ、と言われそうですが・・・実は私の祖母はドレメ式の洋裁のプロで、数か月待ちの名人でした。母も名人で、私は仕立ての洋服で育ちました。洋服のパターンという概念を、小さいころから眺めたり聞いたりすることに慣れています。


では、似合うスーツとは、どうやって見分けるのか?


【3つのパターン】


大きく分けて、スーツには3種類ばかりあります。

大体、どれかが似合う。どれも似合う人は、実はモデルでもいない。
似合ってるように見せることはできても、似合うのはどれか一つ

左から。
イギリス式と言われるもの。
イタリア式(フランス式も似たようなもの)。
アメリカ式。

3つとも、なんとなく見た目が違うという程度の事ではなく、肩の空き具合だとか、ウエストシェイプの位置とか、生地の選び方とかが全然違うのです。

3つとも、それぞれ体格というものにフィットして生み出された比率のデザイン。
ということは、自分がどの体格か分かっていたら似合うものが決まってくるのです。

これは見た目には大した差として分からなくても、作る場合には、明確に違う比率で作られていて、着たときには歴然とした差として見えてきます。



選び方。

答え。

はっきり言うと、補正をしないと着られないものは、最初から似合っていないんです。

袖を詰めたり、ジャケットの後ろの裾をどうこうしたり、そんなことしないといけないのは、もう似合わないのです。

はっきり言ってしまうとそういう事です。

吊るしが似合わない、なんていう人いますけど、いや、もう、そのグループのスーツが似合わないだけです。ぶっちゃけると。


イギリス式(トラッド)を着たら、きつい人。太って見える人、その体型じゃないんです。ここがもっとこうだったら、とか思うなら、それはあなたのスーツじゃない。

似合うとは、すっと着て、さっと似合う、そういうこと。


似合わないとどう見えるのか?

きつそうに見える。なんかダサく見える。なんか野暮ったく見える。太って見える。
貧相に見える。短足に見える、などの凄い効果が期待できます。


あれ、この人、スタイル悪いのかな?と思ったら、たぶん、それはスタイルが悪いというより、似合わない原型のスーツ(洋服)を着ていると考えた方が正しい。

それくらい、原型選びは大事です。

補正いらないし、着やせして見えるし。



【具体例、理由】


イギリス式とはトラッドで、三つ揃い(スリーピース)とか、三つボタンとか、とにかく前開きが小さいですよね。SHIPSなんか、このタイプ。

これが背が高い人に似合うとかいう嘘が出回っていますが、嘘です。

背の高さは関係ありません。
はっきり言って、胸のところの「骨」が垂直かどうかなのです。
体の厚みが相対的に薄い人に似合うのです。

明石家さんまさんとか、こういう体型ですね。

薄いから、中にベストとか着ても(スリーピースでも)張り出さないからいいという事。前開きが狭くないと、貧相になるということ。

ハイウエストで、裾が軽く広がっているけど、体が薄いから自然な曲線になる。

肩が狭い。これは、胸骨が垂直な人で肩幅のがっちりした人などいないからです。

街を歩いていて観察していると、この骨が垂直タイプの男性はそんなに主流ではありません。
ということで、似合う人も少ない。

街を歩いて観察すると、日本人男性にはイタリア式が似合う人が多い印象。

だからでしょうか、より人数の多い胸の骨が前にせり出した人に似合うイタリア系が今の主流のようですね。3つボタンは苦しいと感じた男性が多かったのでしょう。

では、イタリア式とか、フランス式ならどうかというと、これは似合う人多いですね。
胸の骨ががっちりしている人。痩せていても、太っていても同じです。

丈が十分に長く、イギリス式のように、ウエストから下が広がり過ぎない。
一旦ウエストをシェイプするものの、そこから体に沿って落ちるのです。

肩まわりがゆっくりしていますが、これもまた、この体格の人には重要なポイントです。
ハイウエストよりも軽くローウエストに見えた方がすっきり見える。
丈も十分あるしね、尻は隠せ!

ビートたけしさんは、こちらが似合うタイプ。

あ!痩せたからイギリス系が似合うとは、期待しないでください。無理です。
太っても痩せても、似合うものが似合うんです。


ではアメリカ式。これはアメリカンな肉体を持った方じゃないと、浮きます。似合わない人が着ると、ジャケットの中で体が泳いで見えます。ブルックスブラザーズとか。

イタリア式が似合う人が、これを着ているのを見ましたが、ずばり、「そのジャケット、袖長くない?身幅が広すぎない?もう少し小さいサイズがいいんじゃない?合ってるの、肩だけじゃない?」という印象です。

デザインが悪いんじゃないんです。日本人に似合う人が少ないだけです。これはこれで理由があって生まれたデザインなんです。アメリカ式は野暮ったい、なんて思ってる人、違います、あなたに似合わないだけです。

【合わないパターンを着る不幸の例

例えば、某アパレル会社の若い社長が、ブリティッシュトラッドをいつも着ています。いつも着ていて、いつもキツそうです。

間違いない、イタリア式が似合うタイプ。でも、おしゃれなトラッドを着ている。

トラッドはおしゃれだから・・・。女子ウケもいいし、似合うなら。ポール・スミスとか、エポカとか。

イタリア式が似合う人が、どうしてイギリス式が似合わないか?

1.肩幅が狭すぎてキツイ
2.袖口が細くてキツイ
3.丈が短い
4.裾フレアが太って見える
5.狭い前開きのせいで鳩胸が目立つ
6.ボタン位置が高すぎて、首あたりが詰まってきつそうに見える

もしトラッドの既製服なら、おそらく、相当に激しい補正をしたと思います。

或は、オーダーメイドでしょうか。しかし、オーダーメイドしても、イギリス式としての原型をとどめないほどの補正を必要とします。肩を大きくしないと無理、動けないと思う。祖母はこれが上手かったけれど、それをしても似合うようになるわけではない、とのこと。

洋服って体そのもの。つまり、体がイタリア式の骨格比率なら、イギリス式の比率の洋服に体を詰めたら、ちぐはぐになるのです。

まずこのようにイタリア式な体型の人が、イギリス式の洋服を着る場合、既製服ならもれなく間違いなく袖を切ったと思う。何故なら、肩がキツイから、肩に合わせると、袖が長くなるから(笑)そして絶望的にジャケットの裾が広がって見える。何故だか広がる。なんだかちぐはぐになるのです。

更に、不幸なことに前の開きが狭く、ボタン位置が高い。そのために、胸骨がせり出しているのとあいまって、きつそうだし、どうしても首が短く見えて詰まってしまう。そして顔が大きく見えてしまうという不幸が重なる。


洋服って完成したバランスになってるものだから、補正を加えるほどに、それが崩れてダサくなってしまう。その崩れも影響する。

また、トラッドが似合う人しか似合わない細かいギンガムチェックとか着ちゃう。これもまた、骨が華奢な人にしか似合わない。でも着ちゃう。よっぽど着たいんだな、と思います。

この方、イタリア系のスーツ着たらいいのに・・・ボタン位置が低い方がすらりと見えるのに・・・チェックも大きいチェック着たらいいのに、といつも悲しい目で見てしまいます。

どこのアパレルかって?某売上の高い有名な会社です。わざと似合わないスーツを着ているのだろうかと私の心を悩ませる人です。絶対にサイズが合うスーツを買える財力があるはず。まして、アパレル会社だし。


喩えて言うなら、ビートたけしさん体型です。この方が、さんまさんと同じ服装をしたら似合わないな、って思うでしょう?そういう事なんです。


皆さん是非、補正なしで似合うスーツを探してください。

無理するのがオシャレと言えるでしょうか?
それは、おしゃれが苦行になってしまうと思う。
特に、スーツは機能性が求められるものだけに。
でも、コンプレックスを気にせず、好きなものを着る!というのがポジティブという誤解がありますが、それこそコンプレックスに振り回されていると思う。体格はせいぜい3種類(だって洋服のパターンに3種類程度しかないんだから)に分かれる。その中で合うのを選ぶのこそ、コンプからの解放ではないでしょうか?

【広告も雑誌も話半分に】

広告を見ていても、イタリア系のスーツが似合いそうな外人モデルが
きつそうにイギリス系のスーツを着ているのを見ることがあります。
これを見て「俺も着てみよう」とワナに落ちる男性もいるかもしれません。
しかし、それは避けた方がいいのです。

モデルさんは、角度やポーズで、似合わないものを誤魔化してうまく着ているんですよ。

【合わせるシャツやネクタイの素材や柄も決まってくる】


また、それぞれのスーツに似合うシャツの素材、ネクタイの柄が決まってしまいます。
もう決まっているんです。
それは、ありとあらゆる過去のデータをもとにそうなのです。

やっぱり、イタリー式、フランス式のスーツをツイードで作るともっさりする。
それは、素材と形が合わないから。
イタリー系のスーツに小さい柄のシャツを合わせると野暮ったい。
一方、ブリティッシュなスーツに大きい柄を合わせると浮く。
アメリカ式には洗いざらしのような素材感のあるシャツが合う。
これには全部、公式があります。恐ろしいほど、はっきりしていて、これを破るとロクなことがない。

このルールは、説明を聞くとどなたでも納得できます。
知っているととても便利。
ファッションは非常にルールが明確で、きちんとした世界だと思います。
感覚ではないのです。
感覚では、パターンは起こせません。
ミリ単位ではかって、切って作るものですからね。

【わたくし事】

私の父の話になりますが、吊るしのイギリス系がぴったりはまる体型。
補正なし。ダーバン、シーザーをずっと着ていた。
年を取って、ちょっとフランスのランバンを着るようになって、急に短足に見える。
おかしい、と思っていたところ、たまたま面白半分にイギリス式の杢グレーの三つ揃いをスーツカンパニーで安く買ったら、今までで一番似合った(笑)
ズボンの裾を直す以外、そのままで、です。

70才、170cm(年とって少し縮んでるかも)、そこそこ細身ですが、別に普通体型です。

「似合うスーツだと、値段じゃないんだねぇ」としみじみしました。
今まで高いスーツ買ってたのに、勿体ないねぇ、って。


私の場合は、この父の娘だけあって、胸の骨が垂直に落ちる体型。

すなわち、私の体型は補正のいらないドレメ式。しかも9号の原型そのもの。
スーツで分けるなら、イギリス式です。
どういう洋服かというと、いわゆるシャネルとか中原淳一の絵に出てくるようなスタイル。
(ちょっと例えが良すぎますかね。)
曲線が多く、そもそも体の厚みがない原型です。
祖母が私を一目で見て「ドレメだね」で決まりました。

もう一つは文化式ですが、補正しないと私には着られません。
いわゆる、イタリーやフランスのものがこれに対応していると言っていいと思います。
私にはいくらプロが丁寧に補正しても、あまり身に合いません。

それが、骨というものだな、と思います。

文化式で作ると、私は非常に貧相に見えるので、母があれこれ補正してくれました。
それでも、ちゃちゃっと作ったドレメ式のものの方が着やすいに、楽。
不思議ですが、これが現実。

母なぞは、そういう目で世の中を見ているので「あの人、あそこにダーツ入れたらいいのに」とか、あの人はあの襟はダメだ」とかよく言っています。

母は自分はどうしているかというと、自分はドレメ式も文化式も似合わないので、囲み製図というやつで、超らくちんデザインのものを着ています。いわゆる、アメリカンな体型の人なのです。

「せっかく一番難しいドレメ式が作れるのに、誰でも作れそうな囲み製図が似合うなんて」とボヤいています。



ということで、洋服のパターンはざっくり3種類。
どれが自分に似合うか、早めに分かっておくと、無駄がなくていいですね!という話でした。
雑誌や洋服屋さんの口車に乗らないでねー!!
なんでも似合うなんて、嘘だからねー!!

スーツカンパニーに行って、すっと着られる奴を着る!これがいい!
着たいやつじゃなく、着られるやつ、それです。





Viewing all articles
Browse latest Browse all 125

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>