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すごいよ擬似黄金比!:ウクライナの議会とバロック絵画

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Judith and Holofernes by Artemisia Gentileschi

ウフィツィ美術館所蔵 

バロックの女流巨匠アルテミシア・ジェンティレスキの作品です。

このようにドラマチックな17世紀の絵画・その他芸術の様式を総称して「バロック様式」と呼びます。

そして、これが、代表的なバロック絵画です。

覚えておいてください。

では、次を見て見ましょう。



昨年夏頃に出回った写真です。

荒れ狂うウクライナ議会の一場面を捉えた写真が、まさにバロック絵画のようだ!

ということで、額縁に収めてみたら、本当にそんな風になったということです。

一部報道では、ルネサンス絵画と表現されていますが

このような、動きのある劇的でドラマチックな人物描写や構図は

バロックの特徴です。

ルネサンスはバロックに先立つ様式ですが、もっと静的な表現です。


そもそも、この写真が注目されたのは
黄金らせんの構図になっているな、と気づいた人がいたのがきっかけ。


Daily Dot の記事  2014年8月8日


他の場面もそう。



別にこれは特別なことじゃなくて、報道カメラマンは構図についての知識が豊富で

自分が撮る写真の構図が、このような絵画で美しいとされる比率におさまるよう工夫しています。

そして、たまたまウクライナの議会で起きた出来事が

びっくりするほど元気が良く、構図も大体黄金比だし

(大体だったら厳密には黄金比じゃないけど)

ポーズや人物の絡みなどから、結果的にバロック絵画的に見えるいうことです。


よく注意して見ると、報道写真は構図に気を使っています。

もちろん、広告もそうだし、TVのカットや、映画のカットもです。

もちろん、イラストなんかもそうです。

そういう目で見ると、ものすごい工夫に気づきます。



ウクライナの議会は動きが激しくてバロック的ですが

むしろ、ルネサンス絵画的なシーンは、このフランク・ランパード選手の一シーン。

このように、静的なポーズの方がルネサンス的印象を与えます。

ルネサンス的=古典的ということなのですが、古典的に見せるには静的であることが

大事な要素なんですね。


こちらがプラド美術館所蔵、ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデンの『十字架降下』の一部分。

これは初期ルネサンスの部類に入ると思いますが、ね、ランパードの写真と似てるでしょう。

しかも、静的でしょう!彫刻的と言ってもいいかもしれません。


補足になりますが、以前も黄金比は美的に重要な要素とのべましたが 

繰り返しますが、数学的に厳密なものではありません。

どうやら、人の眼は「大体これくらいの比率」を美しいと捉えるようで

大体でいいみたいです。


もっとも、画家が構図を作るとき、かなり幾何学をつかって

下絵などで画面に線を引いたりしてバランスを決めるため

フリーハンドと比べたら、まるで定規で引いたような配置にはなっています。

しかし、それも本来の数学的な正確さから言うと、外れたものです。

このあたりは、是非以下リンクの本を読んでください。

黄金比はすべてを美しくするか?―最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語  (ハヤカワ文庫NF―数.../早川書房
¥907
Amazon.co.jp
この本を読んでください。
いわゆる芸術家が使っている「黄金比」というのは、数学的厳密なものではなく
ざっくりとした便利な比率、というものだと分かります。
だって、見る側の人の眼って、わりとファジーですからね、そんな厳密じゃなくていいんです。
よく見たら、ウクライナの議会の写真に引いてある螺旋も、厳密に画像と対応していないでしょう?
ざっくり目分量でいいんです。


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